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日本の成長企業

ngmocoの大型買収。DeNAのグローバル展開の最前線とは

ngmoco, LLC VP, Global Alliances
守屋彰人 氏

1980年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2003年4月にソニーに入社。ソニーでは、ホームオーディオ事業における経営企画・商品企画を担当後、ソニーエリクソンスウェーデンにて、グローバル企業とのアライアンス交渉を含めた携帯電話事業のアプリケーション・サービス企画を担当。その後、A.T.カーニーにて経営戦略コンサルティングを経験し、2010年9月にディー・エヌ・エー社長室に入社。ngmocoのグループ化に伴い、2011年6月より、ngmoco, LLCにおける、VP, Global Alliancesとして、世界中の企業とのアライアンスを取り仕切る。

DeNAがngmocoを買収した経緯を教えてください

株式会社ディー・エヌ・エー|ngmoco, LLC VP, Global Alliances|守屋彰

DeNAはもともと早くから海外市場に着目していました。もちろん米国は大きなターゲットの一つでしたので、ミニネーションという海外向けサービスを行う子会社を立ち上げ、独自にサービスを提供していたのです。日本では、モバゲー(以下、表記を「Mobage」に統一)は非常に速いスピードで成長しましたし、Mobageほど高いARPU(ユーザー一人当たりの課金額)を実現したビジネスは世界でも類を見ません。

この点ではFacebookやZyngaと比べても圧倒的ですので、そこで培った運営ノウハウには自信がありました。海外市場向けサービスであるミニネーションは順調に成長を続けていたものの、日本市場ほどには急速にユーザーを獲得することができていませんでした。そもそもMobageのビジネスはプラットフォームとゲームコンテンツのコンビネーションで成立しているのですが、プラットフォームについても、個々のゲームについても、国ごとの特徴を踏まえて設計する必要があることがわかってきたのです。

ユーザーインターフェイスや、ユーザーエクスペリエンスといったLOOK&FEELの部分もそうですし、ローカルのゲームデベロッパーとの関係構築についても、そのまま日本の成功例を展開するだけでは急速に発展できないことが徐々に分かってきました。

DeNAとして、海外事業をこのまま自力で伸ばしていくのか、既に米国で強い基盤を持つプラットフォーマーを買収して進めるかどうかの検討がはじまりました。一方、当時のngmocoはスマートフォン向けソーシャルゲームの開発力・運営力では業界でもトップクラスであり、2010年9月末までに、17タイトルがiPhone App StoreのゲームアプリランキングのTop10入りを果たすなど、業界全体で非常に評価が高いゲームデベロッパーであり、プラットフォーマーとしても、2010年9月末時点で1200万人以上のユーザーを持っていました。

ngmocoのCEOであるNeil Youngをはじめとする優れた経営陣・開発陣が、緻密なデータ分析に基づき、主にダウンロード無料のアイテム課金型のソーシャルゲームを開発し、運営していました。それはまさにMobageのビジネスモデルであり、NeilはDeNAグループに入る前から、「我々は欧米のMobageになるんだ」と言って、DeNAをウォッチしていたそうです。そのような問題意識を持っていた両社の経営者が出会ってから、今回のM&Aまでそれほど長い時間はかかりませんでした。DeNAは、高いARPUを実現し、日本で高成長・高収益プラットフォームビジネスを構築したノウハウと実績があるものの、欧米を始めとした世界市場向けのノウハウと顧客基盤が弱い。

一方で、ngmocoは米国を中心としたゲーム開発ノウハウと実績があり顧客基盤もあるが、プラットフォーマーとしての大きな成功体験がない。「お互い、持っているものと持っていないものがある」「一緒にやれば、世界No.1のプラットフォームを築けるのではないか」という思いが一致し、一体となって世界市場を獲りに行くことになったのです。

DeNAグループの今後のグローバル戦略を教えてください

株式会社ディー・エヌ・エー|ngmoco, LLC VP, Global Alliances|守屋彰

「ngCore」という、グローバル共通のゲーム開発エンジンが一つのカギといえます。今、世界はスマートフォンの浸透とソーシャルゲームの出現で、大きく変わりつつあります。ngmocoを含むDeNAグループとしては、自社でゲームを開発するだけでなく、「Mobage」という世界No.1のソーシャルゲームプラットフォームを確立し、ゲームデベロッパーの方々からも、どんどん面白いゲームを提供して頂き、「ともに栄える」エコシステムを築きたいと考えています。

しかし、そこには世界中のゲームデベロッパーが頭を悩ませている一つの問題があります。それは、OSの違いです。今、ゲームデベロッパーが一つのゲームをAndroid向けとiOS向けの双方に開発する場合、ゲーム提供先のOSによってコードを書き分けなければならないという大きな手間が発生しています。

これは、ゲームデベロッパーが、世界中にゲームを提供するに際して、ひとつのネックとなっています。 ngCoreは、世界中のゲームデベロッパーが抱えるこの問題に対して解を提供するものといえます。ngCoreを使うと、一度の開発でAndroidとiOSの双方にゲームを展開することが可能となります。

これは画期的で、デベロッパーの方々にとっては、OSを気にせずゲームを開発できることになります。この「ngCore」に、世界統一のプラットフォームブランドである「Mobage」が掛け合わさると、日本のMobage向けにゲームを提供しているパートナー各社の世界展開が極めて身近になります。逆に、ngmocoのパートナーである米国を中心としたゲームデベロッパーにとっても同様です。要するに、「ngCore」というエンジンと、世界統一のプラットフォームブランド「Mobage」で、ゲームデベロッパーの方々も含めて世界に出ていこう、というビジョンであり、考え方なのです。

ngmocoをM&Aしてから、世界のDeNAを見る目が変わったと感じますか

株式会社ディー・エヌ・エー|ngmoco, LLC VP, Global Alliances|守屋彰

もともと、ある程度ウォッチはされていましたが、今回のM&Aで、もうシリコンバレーのネット関連企業やベンチャーキャピタルで、DeNAやngmocoを知らない会社はほとんどなくなったのではないでしょうか。我々の先行きも非常に注目されていると感じます。

そしてこれは、必ずしもネット業界やシリコンバレーだけの話ではありません。私はDeNAに入社してから、NTTドコモといった国内プレーヤーとの提携のみならず、サムスンやAT&Tといったグローバルプレーヤーとの提携をまとめてきましたが、グローバルプレーヤーについては、最初はかなり苦労しました。

サムスンは最初、「Who are you?」という感じでした。サムスンは実績のある大きな会社と組むことが多いですし、自分たちに一定以上の知見がある分野でないと簡単には提携しない大企業ですから、当然の反応です。もちろん、日本でのDeNAの成功についても話をしましたが、「日本でうまくいっていることはわかりました。でも、世界で勝てるかどうかは未知数でしょう。いったい今、何人の海外ユーザーを持っているのですか」と。

これに対してファクトベースで十分な反論ができなかったので、説得にも限界があったんです。しかし、その交渉中にngmocoのM&Aが決まったんです。これで明確に潮目が変わりました。「これからDeNAとngmocoが作る新しい「Mobage」を、サムスンが世界市場に向けて提供するスマートフォンに乗せるべきだ」という提案が強いリアリティと魅力を帯びて、交渉が成立し、提携が決まったんです。米国最大の通信会社であるAT&Tとの提携についても、同様です。ngmocoとDeNAが世界に向けて提供する「Mobage」を、AT&Tから発売される端末に提供するという契約なのですが、AT&Tは米国の通信会社であり、日本で通信や端末を提供しているわけではないので、日本のMobageもDeNAも全く関係がありません。

そのAT&Tが我々をパートナーに選んだ、ということは、DeNAグループが既にグローバルプレーヤーの一歩を歩み始めているひとつの証左ではないかと思います。 また、これはゲームデベロッパーからの見え方にしてもそうです。AndroidやiOS向けのアプリの中で、ソーシャルゲームでこれだけのビジネスが成り立っているという点で、日本は際立っています。そして、この成功ノウハウは間違いなくDeNAの中にあります。

例えばZyngaは、Facebook向けにゲームを提供していますが、Zynga自体がプラットフォームを持っているわけではないですよね。スマートフォンを中心に、これから世界的に更なる成長を遂げるモバイル分野で、プラットフォームとゲームの両方を持っているプレーヤー、しかも、世界で戦えるレベルの売上、利益、ユーザー数、テクノロジー、戦略を持っているという点では、ngmocoを含めたDeNAグループが世界で一番可能性があると見られているのではないでしょうか。

実務上は、どのようにしてngmocoとDeNAの融合がなされているのですか

実は、DeNAやngmocoという区分けはもう既にほとんどないんですよ。ngmoco社長のNeilがDeNAの取締役に就任しましたし、グローバルの戦略はNeilも含めた5人の取締役が中心となって決めていますからね。現場レベルでも通常業務の中で当たり前のように人材が入り乱れているので、どちらがDeNAでどちらがngmocoというのもないんです。韓国オフィスの立ち上げについても、DeNAからも、ngmocoからも人が入り込み、一つの会社としてシナジーを発揮しています。

ヨーロッパは、ngmocoの役員が早速現地に飛んで、取り仕切っていますし、今後ヨーロッパにDeNAから人がアサインされる可能性も十分にあると思います。 このngmocoのサンフランシスコオフィスには現在200名ほどの社員がいますが、その中にはもちろん日本人もいます。この日本人メンバーは、本当にバラバラに配属されており、基本的には同じ部署に固まっていません。日本からも毎週のように誰かが出張に来ますし、ngmocoの社員が、東京や中国、韓国、ヨーロッパなどに出張したりすることも頻繁にあります。そういう意味では、「過度にグローバルを意識する環境」というよりも、「自然かつ当然にグローバルな環境」、という感覚の方が近いと思いますね。

それにしても、守屋さんの一年の密度はもの凄い濃さですね

株式会社ディー・エヌ・エー|ngmoco, LLC VP, Global Alliances|守屋彰

それは、DeNAならではですね(笑)。確かに私自身も、サムスンとの提携をまとめ、NTTドコモとの提携をまとめた後、ngmocoに赴任してAT&Tとの提携をまとめ、マネジメントを経験して...、とても一年間の出来事とは思えません。一年間でも大きな仕事ができるのは、すごく働きやすいから、というのもありますね。自信を持ち、論理立ててきちんと説明すれば、「じゃ、やってみろ」と言われることが多いですから。

能力をフルに発揮できる環境だと思います。失敗したとしても、途中過程に応じてそれほど責められない風土と言えるんじゃないですかね。「許可した以上、マネジメントも一部責任を負っている」という感じで任せてくれますから。

シリコンバレーの風土同様、自分が責任を負ってやってみて、多少失敗してもまた立ち上がりやすい雰囲気があると思いますね。 それに、とにかく社員が優秀ですよ。特に、経営陣が極めて優秀です、本当に。それに、経営陣同士が、普通の会社では考えにくいほど関係が良好なんですよね。社内政治は皆無ですよ。以前、前社長の南場が、「私、この会社って悪くないと思うんだよね。好きだよ、DeNAのこと。」と言っていたのが、今になってわかります。私もDeNAのこと、大好きですよ(笑)。この一年を振り返ると、転職活動時にオファーが出ていた大企業や有力ベンチャーに行かなくてよかったな、という確信が間違いなくありますね。

どういう人と一緒に働きたいと思いますか

何か尖がったものを持っていて、夢やビジョンに向けて、責任を持って成し遂げられる人と一緒に働きたいですね。戦略を描けることや、プログラムを書けることは素晴らしいことなのですが、それはあくまでも何かを成し遂げるための手段です。成し遂げることのために「たとえ一人になってでもやってやる」という気概のある人と働けると、私にとっても、エキサイティングです! 日本発の企業が世界で大成功した例は最近の日本では少ないと思うんです。

その一つの候補として、DeNAは非常に面白いですし、数年後には間違いなくもっと多くの国にオフィスができているはずですから、今、DeNAグループに転職してくる人は、ビジネス側にしても、エンジニアリング側にしても、各国で、役員になる可能性が十分にあると思います。

アジアでも、アメリカでも、ヨーロッパでも、どこに行っても、「やはり「Mobage」がナンバーワンだよね」という世界を創りたいと思っているんです。そのためには、この3年が勝負だと思っています。エンジニアの方にとっても魅力的だと思います。技術的に誇れるエンジニアがたくさんいますから。そういう人たちと切磋琢磨しながら、「Googleも越えてやる」、という気概の方がいたら、非常に面白い環境だと思います。

「DeNAはゲーム会社だ」というイメージが気になってどうしても踏み切れない方もいらっしゃいます

株式会社ディー・エヌ・エー守屋氏

そういう人の気持ち、わかりますよ。私がDeNAへの入社を最後まで迷ったのも、まさにそこです。私は当時、いくつかの業界からオファーを頂いていました。DeNAの面接で会った人たちはみんな、素晴らしく優秀でしたし、魅力的な会社だったのですが、最後までネックだったのが、「DeNAに転職するということは、ゲーム会社で働くというキャリアを選択することなのか」ということでした。

当時私は、環境・教育・医療など、人々の直接役に立っていると感じられる事業をやりたいと思っていたのです。それで、当時の社長である南場に気持ちを正直に伝えたんです。そうすると、南場が言ったんです。「DeNAって会社はさ、Eコマースとか、オークションとか、アバターとかさ、いろいろやってきたんだよ。

今も、ちゃんとやってる。そしてたった今、時代の最先端であるソーシャルゲームという事業をやっていることに意味があると思うのよ。インターネットの最先端、エッジを切り出して事業化できるだけの経営陣やメンバーのレベル、スピード、正しさ、フレキシビリティってやつがDeNAの強みだからさ」と。 それで、踏ん切りがつきました。

30代以降は大事ですよ。その人がどんな実績を積んできたか、しかもその実績を、どれだけ広範囲から認められるか、という点で。それが、日本国内からしか認められないものなのか、アメリカでもヨーロッパでもアジアでも、「おおっ」と言われる実績なのか。そう考えると、DeNAで働くことが、最適な選択肢に思えてきました。私はソニーでエレクトロニクスの商品企画や事業戦略をやった後に、スウェーデンのソニーエリクソンで、モバイルのアプリケーションやサービスの開発、他社との提携を手掛けてきました。

また、その後はA.T.カーニーで戦略策定能力を鍛えてきたので、DeNA入社後、day1から役に立てるんじゃないかというイメージが入社前からありました。大きなテーマを与えてくれれば、あとは任せてくれ、という自信があったんです。それで、考えが定まりました。「一番得意なところで、最大限実績を残してやろう。そういう30代にしよう」と。であれば、一番力を発揮して、世界レベルで大きな実績を創ることができる場に行こうと考え、DeNAを選びました。環境・教育・医療といったテーマは、おそらく後からでもできると思ったんです。 実際やってみると、楽しいですよ、ゲーム事業は。音楽と映画に次ぐ三大コンテンツだと思いますからね。

広くエンターテイメントという意味では同じ領域ですし、「ちょっと気分転換にやって、すっきりした」といったユーザーの声にも日々触れます。世界中で楽しまれているエンターテイメントなんですよね、ゲームは。そういう意味で、世界を相手にしやすい事業だともいえるのではないでしょうか。 もちろん、「好きこそものの上手なれ」ですから、ゲームが好きな人は大歓迎されます。自分の特性とやりたいことを考えて、それが今のDeNAと合致すると感じたら、ゲーム会社だと狭く捉えずに、ぜひ興味を持ってほしいですね。

最後に、読者に一言メッセージをお願いします

やりたいことをやる、ということが大切だと思います。一度しかない人生ですから。仮に、今の会社で高く評価されていたとしても、それがその人にとって幸せとは限りません。やりたいことが何なのか、よくわからないまま今の仕事をやっているという人も、少なくないはずです。人それぞれ、自分のやりたいことや得意なことは違うはずなので、今の職場の評価軸だけで自分を計る必要はないと思います。仕事以外で培った経験やキャラクターも全部活かして、総合力で勝負するのがいいんじゃないか、と。それに、せっかくやるなら、会社としても個人としても、世界で負けたくない。一発でかいことをやりましょう、と。

株式会社ディー・エヌ・エー|ngmoco, LLC VP, Global Alliances|守屋彰

自分自身の能力が最大限発揮できていると、楽しいですよね。もし、現職がそういう環境であれば、無理に転職する必要もないと思います。でも、そうでない人は、早く、大切なことに気付いた方がいいのではないかと思います。転職活動中に、センシティブになる気持ちはよくわかります。私も経験者ですから。論点をいくつも並べて、メリットとデメリットを比べたりして。でも私自身は、頭で考えているだけじゃ何にもわからなかったんですよ、結局。動いてみないと、向き不向きもわからない。

外部要素を整理したとしても、それだけでは自分が何をやりたいかが見えてこない、という人も多いんじゃないでしょうか。 DeNAグループでは、戦略を立てる人も、実行していく人も募集しています。部署ごとの垣根もほとんどありません。いきなり海外に飛んで事業を立ち上げてきてくれということもあります(笑)。「本格的に勝負をしたければ、黒帯をとれるところでやる」というのが大切じゃないかと思うんです。興味を持ったら、ぜひ、アクションを起こしてみてください。一緒に世界を獲りましょう!

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