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日本の成長企業

イノベーションの当事者として、今、考えていること|井上 陸氏(後編)

Google Inc.
Product Manager 井上陸 氏

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井上さんが個人的に “これはinnovativeだ” と思ったガジェットやプロダクトは何ですか?

ガジェットでいえば、やはりiPhoneでしょうね。iPhoneを初めて触った時は、「これはユーザーインターフェイスのイノベーションだな、と」。極端なことを言うと、初期段階のiPhoneの機能自体は昔のパームパイロットに既にあったものと大差ないと思うんです。ただ、全くその完成度が違う。パームだって、メールも、ブラウジングも、その他のアプリケーションも動きましたが、それらがどう連動しているかとか、それを実際に触った時にユーザーがどう感じるか、といった点が全然違うんですよね。

私も学生時代に興味本位でパームOSを積んだPDA「CLIE」を使っていたのですが、当時は、“techie”な人しか使っていなかったし、相当労力をかけないと、本当の意味で使いこなすことはできなかったと思います。もちろん、データカードを差して通信していた当時とは通信環境が大きく異なりますが、決定的なのはそのユーザビリティ、ユーザーエクスペリエンスの違いだと思うんです。「万人が使えるレベルにまで、スムースになった」「その結果、ネットワークに『常に』つながっていることが可能になった」という点が決定的にinnovativeだと思います。

あと、Googleはさすがに革新的なプロダクトを生み出していますよ。検索やアンドロイドはもちろんですが、 「Google Maps」、「Google Earth」などもやっぱりすごいと思います。「こんなスケールで、こんなことが良くできるな」、というシンプルな凄さを感じます。ユーザーの問題や、根源的ニーズに迫ったという意味でも、同じくイノベーションに携わる者として、共感できるプロダクトがいくつもあります。

Googleで、世界最高レベルのエンジニアと働いている井上さんから見て、優秀なエンジニアに共通するものは何でしょうか。子どものころから天才だったのでしょうか。

どのような幼少期を過ごしてきたかはあまり知らないのですが(笑)、プログラミングの天才といえるような人には何人も会います。確かに彼らは圧倒的です。Googleでは、エンジニアに限らず優秀な人ばかりだと感じますが、極めて高い技術力と「ユーザーにとってどうか」という視点を併せ持ったエンジニアと仕事をするととても楽しいです。コーディングについては特に、「スケーラブルなコードを書く力」が重要です。コンシューマー向けのサービス、特にGoogleのような規模であれば特に、数千万人、数億人、場合によってはそれ以上の人たちが日常的に使うことを視野に入れる必要があります。

ユーザーの視点に迫ることと、スケーラビリティを高いレベルで両立し得ることが、シンプルではありますが「優秀さ」の大きなカギではないかと感じます。Googleで日々接しているエンジニアについて言えば、とにかくハイクオリティなコードを、早く書く力があります。それに加えて、ユーザーエクスペリエンスにおいても深い洞察を持っている人もいます 。そういう人は、技術的に何が可能で、何が難しいのかももちろんわかっていますし、ユーザーにとって何が大事かを軸にもできる。こういうチームでやっていると、とても早くて、とても楽しい。アイディアをディスカッションしたら、驚くべきスピードと精度で次の日にはプロトタイプになっている、なんていうこともあります。

世の中には自分自身の環境に満足していないエンジニアもいます。

どの職場が良くて、どの職場が悪いという話ではないのですが、もし優秀な人たちが、現状維持に時間と労力の大半を割き、新しいものを生み出していないのであれば、それはもったいない気がします。せっかく新しいものを生み出す力を持っているのであれば、その力を使わないのは、もったいない。だって、イノベーションを創り出すのは、本当に楽しいことだと思うんですよ。それによって、ユーザーの問題を解決したり、本質的なニーズを満たしたり、人々の暮らしが便利になったり。

仕事には、現状維持の仕事と、新しいものを生む仕事がありますが、現状維持に使う時間を最小限にして、新しいものを生み出すことに最大限の時間を使わないと、「リスク」があると思うんです。これだけ変化の速い時代ですから、現状維持に仕事の大半の時間を使ってしまうと、その間に自分自身が古くなってしまったり、取り残されてしまう恐れがあります。それは、この時代においてとても怖いことだと思うんです。それに、何よりも楽しさが違います。新しいものを作ることは本当に魅力的なので、会社もそういうことができる会社がいいと思います。

その点でGoogleは、優秀な人材が仕事に熱中し続けられるよう絶えず努力をしていると感じますね。ローンチしたプロダクトの現状維持、つまり、メンテナンスワークに仕事が偏りすぎず、新しいものを創り出したり、プロダクトをさらに改良改善するなど、クリエイティブな仕事ができるよう、配慮されています。それに、ソフトウェア業界はとにかく「人」です。Googleには伝説的なエンジニアが何人もいるので、それに惹かれて優秀なエンジニアが転職してくるといったことは確実にありますね。私の同僚にも、シリコンバレーでスタートアップを立ち上げて成功させ、GoogleにM&Aされてここにやって来た、という人たちもいます。こういった優秀な同僚と一緒に働き、世界に向けて新しいものを生み出し続ける仕事そのものが、やりがいを感じ、人を惹きつけている大きな原動力であることは間違いないと思います。

コンシューマー向けのサービスで活躍するために、心掛けておくべきことはありますでしょうか。

ユーザーの問題にどれくらいセンシティブで、どれくらいユーザーの問題に迫って解こうとしているかが大切です。また、ユーザーエクスペリエンスへのこだわりは、コンシューマープロダクトで成功するには必須の条件だと思います。

例えば、ある機能を作るのに、ユーザーにとって少しだけ不便なデザインなら簡単に実装できるけれど、ユーザーにとって直感的なインターフェースにするためにはかなりの労力が必要、という場合に迷いなく後者を選ぶような感覚です。そういった感覚を養うためには、今は異なる業界にいる人でも、週末や余暇にモバイルアプリを作り始める、といったことからスタートするのもいいかもしれません。

特に、今はオープンソースで優れたコードを手に入れながらアプリケーションを作ることができる時代ですので、気軽に始めることができます。ユーザーを強く意識し、自分自身でプロダクトを創り出す、という感覚が大切です。とにかく、自分が熱中できるものに取り組み、自分自身で新しいものをユーザーに提供すること。それによって、マインドセットも随分違ってくるのではないでしょうか。

井上さんから見て、日本が世界に対してアドバンテージを持っている分野があると感じますか。

私が主に関わってきたモバイルの分野で見ると、日本は十分に興味深い特質を備えていると思います。特に、“Usage”(使い方)です。今では日本で当たり前になっているお財布携帯にしても、ソーシャルゲームにしても、Usageの点で、世界的に見ても類を見ない先進性を感じます。あとは、世界標準にどれだけ足並みが揃うか、そしてそれをリードできるか、ですかね。日本が取り残されているということは無く、先行している分野もあると思っています。

最後に、読者の方々に一言、メッセージをお願いします。

とにかく、ここ最近の世界の変わり方については、シリコンバレーに身を置く当事者としても驚くほどです。

その中でつくづく肌で感じるのは、「何かをつくりだす人にはものすごい価値がある」ということです。特にシリコンバレーでは、ビジネス側の人たちも、優秀なエンジニアがいないとうまくいかないことをよく知っているので、エンジニアは尊敬され、とても大切にされています。エンジニアの価値を深く理解し、エンジニアを大切にする環境で働き、新しいものを生み出すこと。これに尽きると思います。

そういうことが当然になる社会であって欲しいと思いますし、子供たちも「エンジニアになったらかっこいい」とか、「エンジニアになりたい」と思ってくれる世の中になればいいな、と思います。

ありがとうございました。井上さんが生み出すイノベーションを、これからも楽しみにしています。一年後お話をお聞きすると、全く違う世の中になっている可能性もありますね!またぜひお話を聞かせてください。

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