日本の成長企業

ホワイトプラスは、日常生活のインフラになる - ネットで宅配クリーニングという挑戦

株式会社ホワイトプラス
代表取締役 井下孝之 氏

1982年生まれ。神戸大学工学部卒業後、神戸大学大学院に進学。在学中にベンチャーを志し、修士修了を待たず株式会社エス・エム・エス(2003年設立、2011年東証一部上場)に入社。営業、企画、新規事業を経て、2009年7月に株式会社ホワイトプラスを設立し、代表取締役に就任。「ネット×宅配クリーニング」サービスのリネットが成長中であり、2013年6月にJAFCOより3億円の出資を受けた。

どのようなビジネスなのですか。

インターネット×生活サービスという切り口で、「まだ手が付けられていない日常生活の課題を、インターネットで解決すること」を事業としています。その第一弾として着手し、軌道に乗りつつあるのが、ネットの宅配クリーニング事業「リネット」です。リネットの具体的な流れとしては、リネットのサイトでクリーニングの予約をしていただくと、最短2時間後に宅配便が引き取りに来ます。

それがクリーニング工場に送られ、検品、クリーニングの後、最短2日後に自宅に届くというサービスです。通常のクリーニングは、接客・受付、検品、クリーニング、お渡しを、店舗を介して行いますが、その接客・受付とお渡しという接点をリネットが担うという仕組みです。

小さいお子さんの子育てに奮闘中の家庭や、平日は忙しい日々を送るビジネスマンなどは、なかなかクリーニング店が空いている間に行くことができません。仕方なく週末にいくとしても、そこには長蛇の列・・・。そういうリアルな生活課題を解決することが、私たちのビジネスだと思っています。

そもそも、どうしてそれをやろうと思ったのですか。

私たちは起業する際に、どのようなビジネスをやるか、150個くらいのアイディアを並べて検討しました。ネット×クリーニングを最初の事業とすることが決まっていたわけではなく、起業することを決め、事業を選定している段階でこのアイディアが残ったのです。150個のアイディアはかなり幅が広かったのですが、絞り込む過程では、「ビジネスとして成功しそうか」という点に加え、「世の中に必要とされていて、この先誰かがやるかもしれない」ということを考えていきました。

あとは、市場規模や自分たちが発揮できそうな強みを数値化して比較検討もしましたね。もう一つ、後押しする材料としては、私たち自身の原体験というか、「クリーニングで不自由した経験」がありました。これだけ何でもネットでできて、何でもECで買える時代なのに、こういう不便があるのはおかしいじゃないか、という思いがあったことがリネットのアイディアにつながっています。

ネット×クリーニングというビジネスモデルの実現は大変な道のりのような気がします。

 確かに、やってみると大変でした、本当に(笑)。クリーニングについてはど素人ですから、ゼロから調べなければいけません。まず着手したのが、協力してくれるクリーニング工場探しでした。ネットで受注したとしても、自分たちでクリーニングをすることはできませんから、それを請け負ってくれるクリーニング工場が必要だったからです。

会社を大田区で登記していたこともあり、手始めに大田区のすべてのクリーニング工場をあたりましたが、すべて断られてしまいました。「うまくいくはずがない」というのが大半の方からの言葉で、「クリーニングをなめるな!」と言われたこともあります。毎日、半そでシャツにスーツのズボンを履き、自転車で工場を回っていたので、社会科見学の高校生と間違われたこともありましたね(笑)。

クリーニング工場をしらみつぶしに回ってみて感じたことは、クリーニングに携わる人たちは職人肌の人が多く、「インターネット=楽して稼ごう」というイメージがあったようです。私たちとしては、これで世の中を変えたいという思いが強かったので、「どうしてわかってくれないんだろう」と悶々とする時期もありました。

いかにも大変そうです。何が「好転のきっかけ」だったのですか。

大田区は全敗だったのですが、目白で、私たちの考えを理解してくださるクリーニング工場が見つかったのです。そこで、何とかこの目白のクリーニング工場を起点に、リネット事業を立ち上げようとしたのですが、大きな課題が見つかりました。それは、クリーニングが「接客業」であり、「クレーム産業」であるということです。クリーニング工場を当たる中で私たちに向けられた冷たい視線は、そういったクリーニング業界の「大変さ」を理解していないことが原因だったのだと、後にしてわかりました。

そこで、私たちも小さな場所を借り、店舗を持つことにしました。店舗といっても実際にそこに来客があるわけではなく、ネットで受け付けたクリーニング品をその店舗に送ってもらうわけです。そして、店舗で私たちが検品し、仕分けしてクリーニング工場に発送する作業を行うのです。そしてクリーニングが完了したらまた工場から店舗に送ってもらい、そこでお客様への発送作業を行うということを繰り返していきました。これは、本当に大変でした。

最初は15件も対応すればもうヘトヘトです。来る日も来る日も、送られてくる洗濯物を検品して、仕分け。クレームに電話対応して、それからまた、検品、仕分け。1つ1つの作業に時間が取られ、やればやるほど赤字が拡大していきました。

このままで本当に立ち上がるのかと不安になったこともあります。しかし、CTOの森谷が「何とかなる。一つひとつの作業が今はアナログでも必ずシステム化できるから、大丈夫だ」と言い続け、CMOの斎藤が「ユーザーが増え続けて、リピーターもついてくれば、必ず損益分岐点を越えられる」と言っていたことに救われました。事実、最初は出口が見えなかったこの状態も、少しずつシステム化が進み、半年後にようやく単月黒字に転換して手ごたえをつかみました。

単月黒字達成後も、次のスケールへの対応が必要ですね。

まさに、その通りです。順調にユーザー数が伸びれば伸びるほど、トラブルや人手不足が露呈しました。人手が足りないので発送が間に合わず、夜中にクリーニング済の衣服を持ってお客様の待ち合わせ場所までお届けしに行くこともありました。

この頃は、仕事が増えるたびに、検品・発送センターを移転、拡大するということを繰り返していましたが、これではいずれ限界が来ますし、お客様に対してもベストなサービスを提供できなくなる怖さを感じました。そこで、「検品・発送センターをクリーニング工場と統合する」という大きな決断をしたのです。

これは既存のセンターの閉鎖を伴うので、私自身とても悩みましたし、葛藤があったのですが、将来のことを考えて決断をしました。ただ、苦しい決断だったからこそ、大きな前進もありました。おかげさまで創業3年目に単年度黒字になりました。

最初はとても苦労していたクリーニング工場の開拓も、今では先方から引き合いをいただくようになりました。ただ、黒字化も引き合いも、喜ばしいことではあるのですが、私たちが日常生活にもっとインパクトを与えられる存在であるためには、ユーザー数がまだまだ少ないということをもっと自覚しなければならない、「もっと、突き抜けなければならない」と感じ始めました。

これまで自己資本で事業を立ち上げてきましたが、外部資本を入れて、一気に事業を加速させることを考えたのもその頃です。結果、2013年6月にベンチャーキャピタルのJAFCOさんから3億円を出資していただき、事業を新たなステージに持っていく決意をしました。

今後はどのような展開を考えていますか。

まずはリネットのユーザー数を100万人にしたいと考えています。資金調達をしたこともあり、打ち手の幅は広がっています。早速、リネットをリニューアルし、サービスを抜本的に改善しました。具体的には、今まで申し込みからお届けまで5日かかっていたものを、最短2日に短縮しました。また、プレミアム会員を設け、価格をより手頃に改変しました。もちろんサイトのUIなども変更しましたが、これらの施策がさっそく功を奏し、前年同月比で約3倍の申し込みが来ています。

また、最初にお伝えしたように、私たちは「まだ手が付けられていない日常生活の課題を、インターネットで解決すること」を事業としていますから、クリーニングにサービスを限定することはありません。クリーニング以外への展開も既に始まっています。現在、新規事業として、「HIROIE(ヒロイエ)」という室内トランクルーム事業がスタートしており、マスコミにも取り上げられ始めています。

これは、無駄な荷物を家に置いて窮屈な暮らしをするのではなく、荷物を預けてもっと広々とした家で暮らす方が幸せになれるのではないか、という想いから来た事業です。これは、提携している倉庫事業者の方にとってもメリットがあります。稼働率の低い倉庫を、ヒロイエで受注したお客様で埋めることができますから。ヒロイエは、消費者の方にも倉庫事業者の方にも貢献する「無限収納できる、クラウド型トランクルーム」といえます。このように、クリーニング以外にも「ネットで解決できる日常生活の課題」はたくさんありますから、それらを事業化することで、「日常生活のインフラ」といわれるような会社にしていきたいと考えています。

今後、どういう人たちと、どういう組織を作りたいですか。

これまで、本当に素晴らしいメンバーと一緒に仕事をすることができたと思っています。クリーニングの素人だった私たちが、何とかリネットを立ち上げることができたのも、「絶対にあきらめない」メンバーと一緒に働けたからこそです。そして今、新しい方をお迎えして、会社を次のステージに飛ばすべき時期に来ています。これは私たちにとっても、これからご入社いただく方にとっても、大きなチャレンジになることでしょう。

ホワイトプラスでの仕事の醍醐味は何よりも、「自分たちの手で、自分たちの日常を作っていけること」だと思います。既存の無駄を省き、より生産的なことができるようにするための仕組みを提供する、と言い換えられるかもしれません。

リアルの無駄を省いて、ネットで最適なサービスを提供するというのは、エンジニアの方々にとってやりがいのある環境ではないでしょうか?また、こうしたサービスを広めるマーケターにも、面白みを感じてもらえると思います。

今は、事業も組織も未完成です。チームがすでに固まっているわけではありませんし、むしろ、「自分たちよりも凄い人」をチームに迎えたいと考えています。そうすれば、その人たちと一緒に、自分たちも上に登っていけると思うからです。

自分自身の日常生活に即した、本当にインパクトのあるウェブサービスを作っていきたいという方はぜひ、アクションを起こしてみませんか。新しい方とイノベーションを起こすことを、心から楽しみにしています。

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