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プロコミットの採用サポート

成長企業と失敗力 失敗をアセット化できるのか?

失敗力|失敗から学ぶ力|成長企業の採用論

失敗を糧にして次の成功につなげるための方法とは?

清水隆史(株式会社プロコミット 代表取締役社長:以下、清水):
岩本先生は、昨年12月に、新経連の「失敗力カンファレンス」でGMO熊谷社長、USEN会長兼U-NEXT社長の宇野さん、サイバーエージェント藤田社長などを交え、「失敗力」に関するディスカッションをされました。非常にインパクトのある議論でしたので、ここで取り上げられればと思います。

失敗力は、「胆力編」と「技術編」に分けられるように思います。先日は、壮絶な失敗体験を乗り越えた胆力に重きが置かれましたが、一方で、「失敗を糧にする技術」というヒントもありました。今回は、成長企業が失敗を糧にして次の成功につなげるための方法論について、議論したいと思います。

岩本隆(慶應義塾ビジネス・スクール 特任教授:以下、岩本):
失敗力を、「失敗を自身や自社のアセットにし、失敗によって蓄積したアセットをレバレッジして将来の成功につなげる力」と定義しました。私がいたドリームインキュベータ(DI)はベンチャー企業の経営支援を事業としていましたので、支援先の失敗をさんざん見てきましたし、DI自体が、マザーズ上場、東証1部への市場変更、東証1部上場企業としてのその後の成長を果たす過程でも、数々の失敗を体験してきました。

成長企業はさまざまな壁を破り続けなければなりません。その中でいわゆる世の中的に「失敗」と思われることに対して、「失敗したというマインドをもつことは、弊害以外の何ものでもない」ということを痛感してきました。

私の最初のキャリアはハイテクグローバル企業の研究開発部隊における技術者でした。技術の研究開発の世界では、うまくいかなかったことを「失敗」と捉えず、「実験データ」という捉え方をしますので、ビジネスモデルを開発するうえでも同じ捉え方をすべきではないかと思っています。事実、科学、技術の研究開発の世界では、失敗と思えるものから大発見・大発明が生まれることも多くあります。成長企業でも、創業当初考えていたビジネスで成功している企業は意外に多くなく、失敗を重ねながら思いがけない事業が立ち上がって成長したという企業も多いと思います。

清水:
失敗は痛みを伴います。多額のお金を失って借金を抱えたり、人が辞めたり、裏切られたり、後ろ指を指されることもあるでしょう。そのつらい経験を「アセット」、つまり「資産」としてポジティブに捉えることは簡単ではありません。このレベルの大きな失敗を乗り越えるには、技術というよりも「強靭なメンタル」が必要な気がします。ですが、失敗にはレベルがあり、会社の存続に関わるような致命的な「大失敗」ばかりではありません。むしろ、日々発生しうる「中失敗」とでもいうべきものをどう扱うか、そしてどのようにアセット化するかは非常に重要なことだと思います。

岩本:
そこがまさに「失敗を糧にする技術」とでも言うべきものですよね。当たり前のように聞こえるかもしれませんが「そもそも失敗はアセットなのだという理解」が出発点だと思います。これは簡単そうに見えて難しいことです。私はDIでのコンサルティング経験やビジネススクールでの研究で、さまざまな組織を見てきましたが、失敗を前向きに受け止め、確固たる方法論で、その後の成功に繋げられている例を目にすることは稀です。

清水:
何がそれを阻むのでしょうね。よくあるのは、組織として失敗に直面すると、まず「誰が」という犯人探しが最初に来てしまい、「人」に帰責してしまうことです。本当は「何が」失敗の要因となったのかという「事」に着眼しなければ、その後の糧にはなりづらいように思います。

岩本:
それは大きな要因だと思います。人に帰責して終わりでは、後に残りません。だいたいそういう人は責任をとって辞めたり、閑職に異動したりして、その人から失敗の本質的な要因を聞き出すこともできませんからね。あとは、そもそも組織がポジティブな例ばかり蓄積して、失敗を蓄積することがありません。トラウマとして残るだけでは、その後に活きません。採用現場でもそういうことはありそうですね。

清水:
失敗は、ややもすると「タブー化」してしまうか、「誤った思い込み化」してしまいがちです。採用の場面でいうと、コンサルファーム出身者のAさんを採用してうまく機能しなかった、失敗した、という場合に、「コンサルファーム出身者はダメだ」というレッテルを貼ってしまうパターンです。

岩本:
すぐにパターン化するのは危険で、タイミングや環境が変わると、同じアクションでもうまく行くこともあり、多面的に起こったことを分析することが重要だと思います。

清水:
誤った思い込みを元に「中途半端な標語化」されるのも危ない気がします。少し前までは「地震だ、火を消せ」という標語が貼ってありました。あれは関東大震災の頃の標語だそうで、今では建物の構造も大きく変わっていますから「まずは身の安全を確保する」ことが大切だと言われています。もちろん火を消すことが大切な場面もありますから必ずしも誤りではないそうですが、過度な単純化はかえって危険だということを感じます。

先ほど挙げた、「コンサルファーム出身者はダメ」も、これに通じるものがあり、事業のフェイズや経営課題、人材の状況によって必ずしもそう言えない場面が来ることは良くあります。それに、コンサルファーム出身者と一口に言っても、AさんとBさんでは全く違いますからね。

岩本:
失敗を多面的に深く分析できていないと、失敗の「アセット化」ではなく「トラウマ化」「標語化」といったことになるんでしょうね。研究開発の世界に戻ると、うまくいかなかった実験データについては、理論に立ち返り「この実験データは理論的にはどういうことなのか」といったことを考えてから、新たな実験に取組みます。ビジネスの世界でもこれと似通っていて、失敗の真因を深く突き止めることこそ、次の成功へのアセットにつながるのだと思います。

清水:
ありがとうございました。失敗力は非常に興味深いテーマですので、本日は課題に焦点を合わせて議論しましたが、今後は具体例をベースに、具体的に失敗をどうアセット化していくかについて議論できればと思います。



成長企業の採用論

岩本 隆

岩本 隆|慶應義塾大学大学院 経営管理研究科特任教授

東京大学工学部卒業。UCLA博士課程修了(Ph.D. in Materials Science and Engineering)。モトローラ、ルーセント・テクノロジー、ノキア、ドリームインキュベータ(執行役員)を経て、2012年より現職。成長企業の戦略論、新産業創出に関わる研究を実施。

清水 隆史

清水 隆史|株式会社プロコミット 代表取締役社長

早稲田大学法学部卒業。ベンチャー企業の経営企画室長としてIPO達成後、ドリームインキュベータに入社。企業の成長戦略、資金調達、組織改革、新規事業のコンサルティングに従事。2005年より現職。成長企業の中途採用支援を行う。

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Topics: 成長企業の採用論

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