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日本の成長企業

「クックパッド」というプロダクトについて

クックパッド株式会社
石田忠司 氏

東京大学経済学部卒業後、国内系コンサルティング会社に入社。新規事業の戦略立案を担当。その後、クックパッドに転職。

まずは、これまでのご経歴を教えてください。

新卒でコンサルティング会社に入社しまして、大手通信会社等の新規事業立案を行っていました。その後、インターネットがもともと好きだったということもあり、ネット企業に転職を考え始めました。いくつか転職先の候補を検討している中で、インターネットだけで完結するものではなくて、しっかり実際の生活と結びついたインターネットサービスの方に興味を持ち始めました。そんな中、クックパッドが持っている「食」というテーマが非常に面白いと思い、入社したという経緯ですね。クックパッド入社後は、マーケティングの企画をやってたんですが、自分自身でプロダクトやサービスを生み出す側に回りたいと思い、ディレクター職にたどり着いた、という感じですね。

クックパッドにおけるディレクターの役割とはどういうものなのですか。

クックパッド株式会社|石田 忠司

基本的には新しいサービスや機能、クックパッドではこれをプロダクトといいますが、これを作ることがディレクターの主な役割です。そして「プロダクトを作ることは、課題を見つけることとほぼ同義」だと思っています。ユーザーがどんな課題を持っているかを見つけるのことが最初であり、最重要の仕事といえます。そしてその課題をどう解決するか、という「答え」がプロダクトです。

例を挙げますと、クックパッドには、プレミアムサービスという有料会員向けのサービスがありますが、その中で最も重要なプロダクトは「人気順検索」なんです。これは、検索したレシピを人気順に並べ替えることが出来るというものです。この人気順検索を使いたくて、多くの方が有料会員になってくださるんですね。私は「お金を払う」という行為のベースには、必ず何か求める価値があるはずだと思うんです。「人気順検索ってて何でこんなに使われるんだろう」って突き詰めて考えると、要するに「レシピを早く決められるようになる」ということに対価を払ってくれている、ということなんですね。

それって実は、1日あたり10分くらいの話なんですよ、おそらく。でも、その貴重な10分を短縮するために、この人気順検索が、こんなに使われている。これは凄いことなんです。たとえば、共働きの人のユーザーさんだとして、一生懸命仕事をした後、一刻も早く家に帰ってご飯を作らなきゃいけない、というニーズがあったりしますからね。 そういう意味では、たとえば「他にも料理という行動の中で、10分を削れるところは、他にどこかないだろうか」といったことを常に考え、具体的な課題にして「その答えとしてのプロダクト」を考えるようなことを日々やっています。

石田さんは具体的にどのようにユーザーと向き合うのですか。

クックパッド株式会社|石田 忠司

クックパッドは、インターネット企業の中でも、比較的ユーザーインタビューをよくやる方だと思います。でも、インターネットは直接お客さんと対面しないので、実はそこが弱点になり得るという意識は常にあります。例えば、スーパーマーケットなら来店するお客さんをじっくり観察できますが、インターネットだとそれができない。そうすると、インターネットの世界ならではのユーザーとの向き合い方が必要になってくると思うんですね。インターネットの良いところは、フィードバックというか、ユーザーが実際にどうプロダクトを使ったか、というのを数字で追えるところです。

そういうデータを見て「なぜ、ここの数字が低いんだろう」という分析を繰り返し、その先にある「ユーザーの行動」を想像する、ということが、重要だと思っています。 あとは、セッティングされたユーザーインタビューというのも意味はあるのですが、とにかく身近な人に話を聞いてみることは、重視しています。クックパッドの場合は、食や料理に関する話ですので、ユーザーが身の回りにたくさんいますからね。

ただ、ユーザーと向き合う上で気を付けなければならない点としては、インタビュー等で「これは良い」「これは悪い」と言っていても、言葉は悪いですが、必ずしもアテにならない、ということなんです。ユーザーさんが「これ良いね」と言ってくれることがゴールではもちろんなくて、「本当に毎日使ってくれているか」が一番重要なんです。

新しいものを生みだすときの、方法論のようなものはあるのでしょうか。

方法論と呼ぶべきかはわかりませんが、「想像」がカギだと思います。 これは、ただ単にぼーっと考えている訳ではなくて、色々な物事に対して「なんでだろう」と考えていることが多いです。本当に取るに足らないと思われることについても、ずっと考えていますね。新しいものを生み出せるかどうかのベースは、「WHYを考え続ける辛抱強さ」にあるという気がします。

「あ、電車の中でこんなふうに検索してるんだ...それなら、こういう時にこういうことができたら、もっと嬉しいんじゃないか」とか。本当に糸口はいろいろなんですが「なぜこんなに使われているんだろう」「なぜこんなに不便なんだろう」というようなことを深く考えていくと、根本的なものにぶち当たります。そこからユーザーの生活や行動を想像してくことで、新しいものが生まれることが多い、と感じますね。

想像したものを、実際のプロダクトにしていく過程はどのようになっているのですか。

クックパッド株式会社|石田 忠司

ディレクターの役割は、課題を発見し、解決策としてのプロダクトを生み出す、ということだと定義しましたが、解決段階では、とにかくいくつかの案を出していって、それを「どんどん試す」ことが重要です。結局、ある程度形にするまで、どれがいいか分からないというのが正直なところですから。とにかくパターン出しをして、どんどんそれを試していく。このプロセスをどれだけ早く回せるかが、重要なんです。

例えば「こういう解決ができるはずだ」というときに「じゃあ、エンジニアと一緒にプロトタイプを作りましょう」となると、大体1週間以上かかるんですよ。それだと遅いんです。 だから、たった1日で試せる方法を考えるんですよ。例えば、新しい検索の仕方を思いついたら、その方法で検索した結果の一覧を、社内の人に見せてみるんです。どんな反応を得られるか、と。あとは、こんなのどうでしょう、というアイディアをチラシにしてみて、「どうですか、これ?」って社内で見せて回るとか。

それで興味を持たれたら、「あ、その機能ってきっと使ってもらえるよね」とか、「便利だと思ってもらえるよね」といった手ごたえが、一瞬で分かりますよね。課題に対する解決策って、無限にありそうに見えるので、長々と考え、時間をかけてプロトタイプを作るよりも、一日で実験する方法を優先すべきだと思っています。

良いプロダクトを、「早く」生み出すコツは何ですか。

やることを減らすことですね。やりたいことが1個見つかると、いろんなものを加えたくなるんですよ。でも、要らないものをまず削る作業が実は一番大事だと思うんです。「これはやらなくていい」って。実は不要なものをそぎ落とすことこそが、ユーザーへの価値だったりもするので。 「作ったものをもっと良くしたい」とか、「機能を増やしてもっと便利なものにしたい」と思いがちなのですが、やっちゃいけないことなんです、本当は。

「実は、これがなくても、この課題は解決できる」ということが重要で、どんどん減らしていきます。 1人の人を深く見ることは重要なのですが、結局「そのニーズを抽象化して、どこまでシンプルに解決できるか」という視点が必須です。問題を解決するものって、意外と簡単に作れることが多いんですよ。逆に、複雑なものは作るのも大変ですし、結局何も解決できなかったりします。ディレクターの大切な仕事の一つは、「エンジニアの仕事を減らすこと」だと思っているのですが、それによってユーザーへの価値も上がることが多いからなんです。

ディレクターとして、良いものを作るためには、優秀なエンジニアと組むことが重要ですね。

クックパッド株式会社|石田 忠司

そうですね。クックパッドのエンジニアは、「これだ」という得意分野を持っている、優秀なエンジニアなので、その点はありがたいです。共通しているのは、良い意味で子どもっぽいところですかね。面白いことには、とことん熱中するところが特に(笑)。

だからこそ、エンジニアの力を最大限に引き出すことも、ディレクターの重要な仕事の一つです。先ほどお伝えしたように、僕自身は「エンジニアの仕事をどれだけ減らせるか」を強く意識しています。

他の会社では、ディレクターの評価指標として、エンジニアの稼働率が掲げられているところもあるようです。エンジニアの稼働率が低いと「もっとエンジニアに何かやらせなさい」みたいなことを言われて、怒られちゃったりするらしいですからね。

僕自身も以前は「いやー、エンジニアの手が空いちゃったな」と思うと、どうでもいい仕事を思いついてしまうんですよ、仮説も特になく。「あれちょっと作ってみてくれません?」といったように。今はエンジニアの貴重な能力は「課題解決に直接つながること」に集中してもらうのが一番いいと思っています。

バックグラウンドや、ご志向等、「こういう人がクックパッドのディレクターに向いている」というものがあれば、教えて頂けませんか。

クックパッド株式会社|石田 忠司

ディレクターの定義が良い意味でも曖昧なので、ターゲットとなる人物像はかなり広いんじゃないでしょうか。クックパッドにも色々なタイプのディレクターがいますよ。数字から見たり、プロセスをしっかり作っていくタイプもいれば、ユーザーへの共感が強くて「こういうものが欲しいはずだ」といったところを導き出すのが抜群にうまいディレクターもいます。必ずしも、ユーザー像とイコールである必要はないです。僕自身、料理を作ってあげる旦那さんは当然いないですから(笑)。

そういう意味では、主要なユーザー像とは一致しませんからね。 あとは、やはりインターネットが好きな人ですね。「インターネットって何が面白いんだろう」というのが分かってる人がいいと思います。「インターネットだったらこういうことができるよね」、とか、「こういうものと相性がいいよね」というのを、肌感覚として持ってる人は、おそらく向いていると思います。 技術的やロジックだけで解決するというアプローチは限界に来ていると思うんですよ、個人的には。 ユーザーが「こうしたら面白いんじゃないの」といった投げかけをすると、他のユーザーがそれに乗っかって、「いいね」「じゃ、こういうのはどう?」って、どんどんつながっていく。

人が発した情報の価値をまとめて、変換して、届けるというサービスはセンスがいいなと思っています。こうしたことを面白がって考えられる人は、かなり向いているんじゃないかと思います。

最後に、クックパッドで働く「面白さ」をぜひ教えてください。

一つ目は、「まだインターネットの活用度が比較的低い人たちに、サービスを提供するという面白さ」ですね。インターネット人口自体はずっと増えていて、数値的にはもう上限まで来ているように見えますけど、ネットの活用度には、すごく差があると思うんです。活用度が必ずしも高くない層が、どうやったらインターネットをうまく使えるようになるんだろう、というところは、今後絶対伸びていくはずです。正直いって、世の中にあるウェブサービスは「ウェブの決まりごとが分かってる人」には使いやすいですが、本当に万人が使えるかというと、まだまだ程遠いと思うんですよね。

クックパッドはそういうところがとても得意だと思うんですよ。 クックパッドのユーザーさんはある意味シンプルで、本当に価値があるものでなければ全く反応せず、逆に、生活を変えるような価値あるものだと一気に使われる、という、その繰り返しですから、手ごたえがかなりあります。イマイチな機能だと「ホントにユーザーさんに見えているのかな?バグって表示されていないんじゃないかな?」ってくらいレスポンスがないですから(苦笑)。でもそういうダイレクトなフィードバックを繰り返し受けながら、インターネットのヘビーユーザーではない人までファンにしていくというのは、本当にやりがいがありますね。

クックパッド株式会社|石田 忠司

二つ目は、料理というテーマほど、生活に根付いたリアルなものは他にないんじゃないか、ということです。クックパッドのユーザーさんの行動には、必ず文脈が感じられるんです。「なぜ、こういう機能が人気なんだろう」とか、逆に「なぜ使われないんだろう」と分析していくと、「あ、子供がこうで、とか、だんなさんがこうだからか!」とか「あ、こういうデータが出ていたのは、こういう生活をしているユーザーさんがいるからなんだ」といった文脈が必ず見つかります。

クックパッドのサービスそのものの裏側に、確実に「生活」というものが存在しているというのが、面白いところだと思いますね。 実は私は、最初からクックパッドに強い興味があった訳ではないんです。「レシピサイトでしょ?」というだけの認識でしたから。でも、入社してから改めて驚いているのは、レシピが持つポテンシャルです。レシピというのは、実は食の一番中心にいるんですよ。レシピ次第で買うものが決まるし、レシピ次第で人の生活が変わります。レシピが本当に食の中心にあるからこそ人はお金を使うし、他の領域への広がりもあります。クックパッドの面白さや今後の可能性というのは、レシピという非常に重要な価値を軸にして、ユーザーと関わっているという点にあると思っています。

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