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日本の成長企業

異色のスタートアップが挑む、「家電のイノベーション」

株式会社Cerevo
代表取締役CEO 岩佐琢磨 氏

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プロダクトの着想は、どこから来るのでしょうか。「技術シーズの組み合わせ」か、「ユーザー行動の観察」か、それとも全く別のところから来るのか。

非常に難しい質問ですね。これはもう、ハードウェアの宿命ですが、「人は、触ったことがないものを想像することはできない」と思うのです。今、車を運転するのにハンドルを使いますが、実は、ゲームのジョイスティックみたいなものの方が、運転しやすいかもしれないですよね(笑)。でも、そういう意見はユーザーからは出てこないし、アンケートを取っても、絶対ハンドルの方がいい、とみんな言うと思います。想像がつきませんから。よって、新しいプロダクトのアイディアは、メーカーである我々から提供して、気づかせる必要があるとは思います。

一方で、ユーザーの行動に着目して新たに出てくる発想というのも、もちろんあります。例えば、ハードディスクレコーダーですね。テレビ番組を何百番組も撮りだめられます、というやつです。今では5万円ぐらいで普通に買えますが、あれが製品化される前に、パソコンマニアはもうそれを自作でやっていました。テレビチューナーカードを買ってきて、当時のWindows98とか95のパソコンに差して、自分でプログラムを作って、深夜アニメだけを全部自動で予約録画する、といったことをやっているマニアの人達がいました。そういう使い方を見て、「誰でも簡単にリモコンで予約ができて、テレビの近くに置いておける、もっと簡単な録画機器があれば売れるのではないか」、という風に思考することは可能だったと思います。

私たちのアプローチは割とこれに近いです。ネットサービスや、ガジェットのマニアみたいな人たちがやっている「先進的な行動」に着目して、その中から、ある程度のボリュームでニーズがありそうなものをピックアップし、要らないものをそぎ落とし、必要なものを追加し、ハードウェアの中に詰め込んでいくという感じです。

ライブ配信はまさにそんなところから切り取ったニーズです。1990年代後半のダイヤルアップモデムだった時代に、坂本龍一さんたちが、「インターネットライブをやるぞ」とかいってやっていましたけど、そういうことを見ていくと、「ああ、こういう需要はあるな」と感じるわけです。「今、何百万円もかけてやっている、あるいはマニアの人たちが機材を工夫してやっている分野をキュッと入れて、26,800円のプロダクトにしたら、広まるのではないか」というように。そこは、ユーザー行動の観察からの発想であり、それをテクノロジーを通じて実現したものがプロダクト、という関係ですね。

Cerevoにとっての「テクノロジー」とは何でしょうか。

世の中で「テクノロジー」という言葉はよく使われるのですが、これは、「要素技術」と、「組み合わせのノウハウ」に分けるべきだと思うんですね。我々は、どちらかというと組み合わせのノウハウ型の会社です。ここでいう要素技術というのは、ハードウェアの世界でいうと「青色LEDを発明しました」というようなレベルの話であり、ソフトウェアの世界でいうと、「非常に高速な、独自の検索アルゴリズムを開発しました」といったレベルの話です。それからすると、我々はこのようなレベルの要素技術を開発している会社ではありません。しかし、テクノロジーの会社かといえば、間違いなく「YES」だと思います。

今ある要素技術を組み合わせて、プロダクトを生み出すテクノロジーにおいて優れた会社でありたいと思っています。Appleもそうだと思うんです。PCで使われるマウスを、商品として世に広めたのはAppleです。でも、マウスというデバイス自体は、プラスチックの成形技術や、ロータリーエンコーダなど、既に枯れた4つか5つの技術や部品を組み合わせて作っているものにすぎません。ただ、あれをコンピューターの入力デバイスに使うということ、ロータリーエンコーダと何かを組み合わせて、ポインティングデバイスを動かすということを考えてプロダクトにした、ということが素晴らしいと思うのです。

MacBook Airが世に出たときに、これを分解して、「これくらい俺たちだって作れるよな」と言っている大手メーカーの人たちがいましたが、「その組み合わせをいかにうまく作っていくか」がテクノロジーであり、価値があるということなんです。

我々がやっているような家電の分野で、ネットワーク、ソフトウェア、ハードウェアという3つをうまく組み合わせて、「どうやったらもっと生活を便利にできるか、もっと豊かにできるか」という視点でテクノロジーを追求し、究極的には人間の拡張や人間の進化に結び付けられるかということを考えている人達は、それほどいないと思います。しかも、それを実際にプロダクトとして世に出している人達というと、ワールドワイドで見ても、驚くほど少ないと思います。

それはなぜかというと、それぞれが、違う産業だからなんですね。日本の大手メーカーにとって、組み込みソフトウェアとハードウェアはかなり近いところにいるものの、サーバーサイドのソフトウェアというと、まだまだ距離がある状況です。一方で、Googleはサーバー側では巨人ともいえる会社ですが、ハードウェアに強みがあるかといえば、そうではありません。要するに、うまい感じで組み合わせるテクノロジーを持っている人はあまりいないのです。それは、「人類にとって、もったいない」と思います。

「家電」×「スタートアップ」というのは、かなりハードルが高いイメージを持っていました。実際に、「物を作る」というのは、初期投資、設備投資、リスクの観点からも非常に大変ではありませんか。

確かに、家電メーカーというと、そういうイメージが湧きますよね。よくわかります(笑)。ただ、時代は変わってきています。一昔前は、「これを作るのに何百万もかかって..」というものが、今は、「5万円で、しかも、あっという間に作れるようになりました」、という話になってきています。

実物をお見せしますね。例えば、この試作機に使う立体物(※右写真)ですが、今までのメーカーがこういうものを作るには、モックアップ屋さんに発注して、100万円近くかけていました。しかし、我々が作ったこの立体物は、たった5万円です。もちろん、これもコンマ数ミリ単位の精密さで作られています。どうやったか?実はこれ、印刷技術なんです。「3Dプリンター」という特殊なプリンターにCADデータを送ると、設計通りの立体物が、出来上がるのです。断面を見て頂くと分かるのですが、積層構造が見えますか?これは、インクジェットのプリンターから、何ミクロンという単位で樹脂を吐き出して、一瞬乾かし、もう1層塗って、ということを繰り返して、立体物を形作っていくのです。

こういうことは、ウェブの世界のイノベーションが、ハードウェアの領域にも作用した結果だと思っています。この基板にしてもそうです(※左写真)。ウェブ上から基板のCADデータをアップロードし、クレジットカードの番号を入力すると、3万数千円が引き落とされて、この基板が5枚ピッと送られてくる、といった感じで、完全にECサイトの世界です。一昔前だと、1万個以上でないと売ってくれなかったようなものが、数個単位でも、ECで簡単に手に入るようになりました。

このような、いわゆるラピッドプロトタイピング(迅速に、試作すること)の技術やコストが劇的に向上しており、それが、家電領域でもスタートアップが成り立つと我々が確信している一つの要素でもあります。小規模のメーカーでも、安く、早く作れるようになり、かつ、低リスクでマーケティングもできるわけですからね。

Cerevoのプロダクトには、強い海外ポテンシャルを感じます。海外展開について教えてください。

既に北米ではLive Shellが発売されており、販売も好調です。最近は、ちょうどヨーロッパの商談が今まとまったところで、デンマークや、スウェーデンなどの北欧で、本格的に販売がスタートします。先日、アメリカのコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)という、世界で一番大きな家電の展示会に出展したのですが、「インドで売れないの?」とか、「南アフリカは?」とか、「ブラジル売りたいんだけど」といったお話がどんどん来まして、15か国近い方から正式な問い合わせを頂きました。Webサービスなどと比べて、その国の文化にあまり依存しないこともあり、「思っていた以上に、ハードウェアのグローバル展開はやりやすいな」、という強い手ごたえがあります。

サーバーシステム、ハードウェア、ソフトウェアを合わせて、新しいものを作っていこう、イノベーションを起こしていこうという人たちは、実はグローバルで見てもものすごく少ないという状態です。海外の展示会に行ったりして、いろいろな国の人たちと話してみても、「実は、そういうことをやっている人は世界でもほとんどいないんだな」という感触でして、そこにすごく面白い可能性があると思っています。

岩佐さんにとって、イノベーションとは何でしょうか。

難しいですが、面白い問いですね。イノベーションの定義は人それぞれだと思うのですが、それによって「人の機能が増える」とか、「人の生活が変わる」というレベルのことではないかと思います。

例えば、飛行機は明確なイノベーションだと思います。人間の身体能力上、飛行機がなければマッハ0.85で飛ぶということは不可能なわけです。でも、飛行機というものが存在すれば、高度1万メートルをマッハ0.85で飛べるわけで、極端に言うとこれは、「人間を改造した」ということに近いんじゃないかと思っています。飛行機が発明されていなければ、もしかしたら10億年後には人間に羽が生えていたかもしれないですよね。多分、飛行機できてしまったから、もう生えないと思いますが(笑)。

他の例でいうと「1000人の友だちを管理する」ということは、多分、江戸時代の人には不可能だったんじゃないかと思います。でも今は、Facebookがあれば、友だちが1000人いても常にアクティブな関係でいられますよね。どちらかというとこれはサイボーグの世界に近いイメージです。脳を改造して、何かチップを埋め込んで、記憶容量を何百倍に増やしたら、多分1000人ぐらいの顔を覚えられると思いますが、実際にはそんなことをしなくても、フェイスブックでボタンをクリックすれば、1000人の顔が一気に出てくる。イノベーションというのはそういうもの、それによって生活スタイルが大きく変わることだと思います。

今後のCerevoの展開には、どのようなチームが必要だと思いますか。

今の最小限のチームで、1つの製品群をしっかり作り込めるチームができているので、同様に、もう1つ、別の製品群を並行して走らせられるチームを作りたいと思っています。具体的には、プロダクトデザイン、それからメカ、つまり「機構」のプロが必要です。あとは状況に応じて、組み込みのソフトウェアのスペシャリストや、回路設計のプロ、部品選定に知見がある人、Webサービスやスマートフォンのアプリが作れる人なども求めています。それに伴って、マネジメント層も厚くしていかなければいけません。要するに、全部、ですね(笑)。

今は、世の中の転換期ともいえる最高に面白い時代です。実は世界でも珍しい「家電のスタートアップ」で、ひとつイノベーションを起こそうじゃないか、という人がいたらぜひ、info@cerevo.com まで、ご連絡をもらえればと思います。あ、それと「キャズムを超えろ」というブログを書いています。宜しければ、そちらもぜひぜひ。

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